「悔いなき人生だったであろう。おのが光る君のために、ささげたのじゃから。」
「姉上。事はそれだけではござりませぬぞ。今、世を去るには…滋子はあまりにも優れた…治天の君の后にござりました。」
【第39回】
「賑やかにござりますな。」
「福原の殿より仰せつかっておりますゆえ。歌や舞いに親しみ、贅を尽くして宴を楽しむ事は、公卿たる我が一門のたしなみ。常々行えと。」
「されどいささか心配にござります。近頃の入道様は、どこか、生き急いでおられるようで。」
「それでも常に、平家は一蓮托生。いかなる修羅の道も、共に歩く覚悟にござります。」
【第38回】
「時忠。つとめに励んでおるようじゃな。されど、いささか行き過ぎではないか?」
「殿は、全てご承知だと申すか?」
「新しき国づくりの邪魔になるものは決して許さず取り除けとの仰せ。義兄上が都に憂いを残さず、福原にて存分に国づくりにいそしむために、私を見込んで任せてくださったつとめ。私は誇りに思うておりまする。」
「時子。」
「まぁ、殿!おいで下さったのですか!?わざわざ福原から。」
「当たり前じゃ。男子より丈夫なそなたが、倒れたなど、ただごとではないゆえな。」
「まぁ、なんて失礼な。」
「まぁ、思うたよりも達者そうで、安堵したぞ。」
「この暑さにやられたのでございましょう。」
「起きて、大事ないのか?」
「もうすっかり、ようなりました。殿のお顔を見ましたゆえ。」
「殿。都へ戻っては頂けませぬか?ご存知のように、昨年暮れより重盛は、体がすぐれず、権大納言を辞任致しましてござります。今もまだ、つとめには戻ってはおりませぬ。入れ替わりに、宗盛が権中納言となりましたが、何しろ、まだ若うござります。」
「皆で一門を支えればよい。」
「時忠のしている事も、一門を支えるつとめにござりますか?」
「あれこれと気をもませてすまぬな。されど、今はこらえてくれぬか?何かを成し遂げるには、憎まれる事をいとわぬ覚悟が要る。」
「されど、かつて信西入道は…」
「さよう。おのれの目指す国づくりに邁進し、憎まれ、そして討たれた。だが、我らは武士じゃ。比類なき武力と財力を誇る武門じゃ。誰にも邪魔はさせぬ。」
「殿の目指す国づくり。行き着く先は、どんな形をしておるのでございますか?」
「これならば、いずこの公達の妻にでもなれよう。」
「徳子を、誰ぞに、めあわせるおつもりにござりますか?」
「うむ。」
「どなたかよきお方が?」
「母上。」
「徳子。そなたは間もなく、帝の妃となる。だが、その前に平家の娘であることを、ゆめゆめ忘れるではないぞ!」
「もとより承知しております。平家に生れたからには、女であってももののふ。きっと見事に役目を果たします。」
「よう言うた。では、兄たちに挨拶に行ってまいれ。」
「美しいのう。かつては私も、かような装束を身につけ、宮中に入る事に憧れておったものじゃ。されど、今ではこれが、次なる戦支度のように見える。」
「皆々、徳子が入内し、またこれを機に、重盛も大納言の職に復した。今こそ一門が映画を極める時、盛大に祝おうぞ!」
【第37回】
「さようなことは聞いておらぬ。此度のことは、礼を欠いた資盛、そなたの過ちじゃ。」
「重盛。これは資盛と摂政様だけの事ではない。我ら平氏と藤原摂関家の一大事ぞ。何を臆する事はない。そなたは平家の棟梁として、正々堂々と訴え出ればよいのじゃ。」
「重盛。殿不在の京でのこの辱め、黙っておるつもりか!?」
「母上。我ら平家は既に5人もの公卿を出した一門。いかなる時も有職故実にのっとっり動かねばなりませぬ。それこそが、父上不在の一門を保つ事にござりましょう。」
「母上。」
「あぁ徳子。何ぞ用か?」
「琵琶の稽古の刻限にござります。」
「そうであったな。」
「さぁ、弾いてみよ。」
「はい。」
【第36回】
「いかなる事じゃ?時忠が流罪などと…。」
「重盛。法皇様をお諌めせよ。」
「はっ。」
「もう16にござります。」
「16?そうか、もう…」
「何か?」
「いや。では重盛。頼んだぞ。」
【第35回】
「父上はともかく、母上までご出家なされたのですか?」
「無論じゃ。」
「付き合わずともよかったのだぞ。」
「平家は常に一蓮托生。夫婦においても同じにござります。」
【第34回】
「寸白ということじゃ。体に毒が入り込んでおる。話しかけてもお答えにならず、こちらの声が聞こえておいでかどうかも分からぬ。」
「薬師はなんと?」
「覚悟をしておくようにと。」
「宋の薬!宋の薬があるであろう!」
「盛国の手元にあるものでは、効き目がないとの事。」
「騒ぐでない!今は落ちつき、なすべき事をせよ。重盛。今、この時より一門を統べよ。殿がお目覚めになるまで、棟梁のつとめ、しかと果たすがよい。」
「我ら平家一門の女には、他の家にはない、大きなつとめが課せられている。何が起きようとも動じず、常に一門の繁栄の為に、身をなげうつ覚悟をせよ。」
「道理に合わぬ事が通れば、一門は乱れようぞ。」
「何を言うておる!?かような時に。」
「宗盛。さような世迷語に、惑わされるでないぞ。重盛を棟梁と立て、兄弟力を合わせ支えるが、そなたのつとめじゃ。」
「正妻の子でありながら、清三郎などと呼ばれて育ったその屈辱をそそがずともよいのか!?」
「時忠!」
「何を言うておる?重盛の事も、宗盛と同じように、わが子だと思うておる。」
【第33回】
「殿。そろそろ、厳島へご出立の刻限にござりましょう。」
「うむ。では行ってまいる。」
「殿。厳島よりお戻りになられたら、五十歳の賀の祝宴を催しとうござります。」
「さようか。よきにはからえ。」
「はい。」
「して、誰の宴じゃ?」
「えっ?」
「生田、何をしておる?どんどん酒を運べ。どなたか、お見えなのか?」
「常盤殿!…か?」
「牛若とやら。是非、殿に会うてやっておくれ。今日は無礼講にござりますゆえ。」
「義朝様のお子じゃ。殿も格別の思いがあろう。」
「まぁ、殿。少しお酒が過ぎたのではござりませぬか?」
「いよいよ厳島の社の工事にござります。此度は長旅になりましょう。」
「全くじっとしておらぬお方じゃ。まこと永久に生きるつもりか?」
「殿!」
「いかがなされました?」
「殿?」
「殿?」
【第32回】
「滋子…いや、滋子様ご立派になられて…」
【第30回】
「財をなげうって紫宸殿を新に造営する事。帝も大層お喜びぞ。」
「道中気をつけてな。」
「ありがとうござりました。これで基盛も迷う事無く成仏できるでしょう。」
【第29回】
「大事無いのでござりますか?入内をたくらむなど、そうもあからさまに帝にお近づきになろうとするは、上皇様のお気に障るのでは…。」
「障らせておけばよい。」
「えっ?」
「殿。此度の事、滋子の姉として、また、棟梁の妻としてお詫び申し上げます。されど、滋子の心より望む事ならば、姉として、祝うてやりたい。一門を挙げて、婚礼の支度を整えてやりとうござります。それには、殿のお力が欠かせませぬ。何とぞ…何とぞ、お許し下さりませ。」
「何と頑固な…もう結構にござります!全て私たちで致しますゆえ!」
「熱い!」
「すまぬ。」
「イタタタタ…」
「すまぬ」
「殿には、恋する女子の気持ちは分かりませぬ。」
「なんじゃと?」
「滋子…。」
「きっと、同じ巻き髪の子でしょう。やんごとなき生まれになっても、恥をかくだけです。」
「滋子…」
「何を言うのじゃ?そなたこそよいのか?上皇様こそが、そなたの光る君ではないのか?」
「いかが致しましたか?」
「そなたも早う支度せい。」
「えっ?」
「殿。ありがとうございます。」
「わしはただ、上皇様に借りをつくりとうなかっただけだ。また、これをしおに、宋との商いにも弾みがつけばよいと思うてな。」
「はい。」
【第28回】
「ひどうござります。私のせいになさって。」
「ん?」
「私は構いませぬゆえ、あの美しき女子をお側女になさりませ。殿の威厳を増す事を、妻の私のつまらぬ悋気で阻んでいると思われてはたまりませぬ!」
「では、何だと仰せになります?」
「常盤は、義朝が心の支えとしていた女子ぞ。それを我がものにしようなどと、どうして考えられる?」
「やはり、それがまことのお心にござりましたか。」
「時子。そなた、俺をたばかったのか!はぁ~。」
「義朝様は敵である前に、掛けがえなき友。その上でご裁断なさればよろしいのではござりまぬか?常盤殿と3人のお子の事も。頼朝殿の事も。」
【第27回】
「義朝様の事でござりましょう?いつか殿が、お待ちになると仰せになったは。よろしいのですか?このままゆけば…」
【第26回】
「すぐに盛国に知らせよ。…して?」
「誰かある!?早馬を出せ!」
「静まれ!殿は言うておられた。信西殿の国づくりに賭けると。殿の目指す世に、信西殿は欠かせぬお方。見捨てようなどと、断じてお考えにならぬ!」
【第25回】
「まぁ!そのような者達ひっきりなしに?」
「うむ。」
「ようございました。」
「病で明子を失うた時、俺は恨んだ。宋の薬をたやすく手に入れられぬ国の仕組みを。さような政しかできぬ朝廷を。」
「はい。」
「もろもろ遺漏なきよう、支度せよ。」
【第24回】
「きっと、まことに致しましょう。あの戦よりこちら、我が夫の肝の据わりようはそれまでの比ではござりませぬ。」
「重盛。経子様に不服があるのか?」
【第23回】
「滋子、つとめに出よ。此度の戦にて、多くの方々が職を追われ、後宮にも人手が足らぬと聞く。そなた、どなたかにお仕せよ。」
「一人で生きておると思うでないぞ。そなたは平氏の棟梁の義妹。進んで一門のお役に立つ事をせよ。」
「今になってようよう分かったのじゃ。武士の妻・棟梁の妻になるということは、如何なる事か。」
【第22回】
「はぁ~、殿!勝ち戦おめでとうござります!ご無事のお帰り、うれしゅうござります。」
「重盛・基盛、よう戻った。さぁもっとよう顔を見せておくれ。懐かしや。」
「北の方様、ご出陣されたはゆうべにござります。」
「もう、一年も会うておらなんだ心地がする。」
「大袈裟な」
「何が大袈裟なものか!」
「はいはい。」
「忠正様…。」
「朝から騒々しくて申し訳ござりませぬ。大叔父上様と朝餉を共にしたいと申しまして。」
「いけませぬか?」
「いつかこの子も、あの竹馬で遊びましょう。」
「おっ?ややが出来たか?ほぉ、それはめでたい。」
「これ、清三郎。さような事で男子が情けない。」
【第21回】
「さればこそ、案じておるのじゃ。」
【第20回】
「まぁ、殿。かような若き娘と?!」
「こんな時ゆえこそ欠かせぬのです。恋する心と言うものが。ね?」
「卑怯未練な真似はせず、存分に戦ってまいれ。されど、ゆめゆめ命を粗末にするでない。決して無駄に捨てるではないぞ。殿も。必ず勝って、無事でお帰りくださいませ。そしてこの子の顔を見てやって下さりませ。」
「ややが?」
「今朝気付きましてござります。」
「かような時に身ごもるとは…きっと戦上手の子が生まれよう。」
「まぁ、女子だったらどうなさります?」
【第19回】
「はぁ?誰が殿のお側女にと申しましたか?」
「帝の寵愛を受けるなんて、まこと朧月夜の君のよう!」
「今日は残念でござりました。義朝様、すぐにお帰りになってしまわれて。お優しそうな方ですね。」
「優しいじゃと?何処を見て、さような事を。」
「優しげな目で、重盛たちの事を見ておりました。きっとあの方にも、大切な奥方や、お子がおありなんでござりましょうね。」
【第17回】
「わかりました!では、私が今から魚をとって参ります。盛国支度をせよ!」
「更に無理な仰せにござりまする。」
「申し訳ありませぬ。琵琶は、とうにやめてしまいました。いくら稽古しても、上達しませぬゆえ、つまりませぬ。」
「フフフッ(笑)棟梁は歌が詠めず、妻は琵琶も弾けずでは、お話になりませぬな。」
「まことじゃな(笑)」
「時に、光る君36歳、紫の上28歳。あら?今の殿と私と同じではござりませぬか!」
「来るでない。一人にせよ。(T_T)」
「そなたの音色と明子の音色はまるで違う。いずれも忘れはせぬ。」
「はい。」
【第15回】
「確かに思い描いていたお方とは違います。思うておったよりもずっと…寂しいお方。誰よりも人恋しく生きてこられたお方。私は、断じて、おそばを離れはしませぬ。」
【第14回】
「まぁ、人のせいになさって!こちらこそ、殿の暑苦しい舞に調子を狂わされているのです!」
「暑苦しいじゃと?!」
「もっと光る君のように雅に舞えぬのですか?」
「俺は平氏を背負い、加茂の祭りで舞うのじゃ!そなたも妻ならしかと支えい!ほれ、いま一度!」
「良いではございませぬか。跡継ぎの座など譲って差し上げれば。」
「光る君が譲ったわけではなかろう。」
「それくらい広い心をお持ちなさいと申しておるのです。さような事をいちいち気に病むようなお方は、そもそも跡継ぎの器ではござりませぬ。」
「何と情けない事を…。一度我が殿と決めたものを、そうやすやすと変えられるとお思いにござりまするか?どれだけ落ちぶれようと、あなた様こそが、我が光る君。それは、生涯変わる事はござりませぬ。」
「俺は家盛に負けた事、悔しいとは思わぬ。ただ…寂しいのじゃ。」
「それは…当たり前にござります。兄と弟ですもの。幼き頃より、仲の良い。」
【第13回】
「まこと、あれだけでよろしかったのでござりまするか?」
「殿にはあれで十分じゃ!全く、いつまでも子供のようにみんなの手を煩わせて!光源氏でさえ、流された先で、ほかの女子と懇ろになり、子をもうけたのですから。全く、流罪などなったら承知しませぬ!(  ̄っ ̄)ムゥ」
「清三郎…父上ですよ。お前が生まれたときに、蟄居されられていた、どうしようもない父上ですよ。」
「怖かったのですから…。殿が帰ってこなかったらどうしようかと…。怖かったのですから…」
【第12回】
「そういうお話ではございませぬ。これはお告げなのです。人を恋うる心がパァッと飛び出す時の来ることの。」
「やめよ!すまぬが時子殿、そこで琵琶を弾じるのはやめてもらいたい。下手くそな音色を聞きとうないからにきまっておろう!」
「下手くそとはなんでございますか?!下手くそとは」
「下手くそではないか!」
「これは明子様直伝の…」
「どこがじゃ!」
「清太殿も、清次殿も喜んでおいでです」
「悲しんでおるのじゃ!」
「お喜びですよね?(^_^)」
「我慢しておると言うておるのがわからんのか!」
「清盛様は、明子様を亡くされたお悲しみから立ち直れずにいらっしゃるのですよ。」
「姉上だって、そこに付け入っておるではありませぬか?」
「付け入る?」
「おとぼけなさるな。若君方を手懐けて、明子様に取って代わろうとしておるのでしょ?」
「清盛様は、明子様だけの光る君です!誰にも入る隙などない。それほどに深き絆にて結ばれておるのです。それゆえ…私はあの時…飛び出した雀の子、伏篭の中に…ハッ!(焦っ)違いまする!違うのです(焦っ)私はさようなつもりでは…」
「悪うござりました。知りませなんだゆえ、姉上がまこと清盛様を…」
「もうよいのです。あのまま通い続けておれば、お前の言うような気持ちに、ならぬとも言い切れませぬ。清盛様のお悲しみに付け込むような気持ちに」
「さように失礼なお話がござりまするか?!あんまりでございます。光る君と紫の上の如き恋に憧れていたのに…どこまでも光らない君!ε= \_○ノ タックル」
「はぁっ?」
「殿、いってらっしゃいませ。」
「おう!しかし、でかい腹じゃのう(笑)」
「また、無礼な事を(笑)」
「大事にせよ。」
【第11回】
「それは清盛様の館にて?(汗)申し訳ござりませぬが、それは…できませぬ!なんと言われようとできませぬ。どうしてもです。」
「あら?おかしゅうございますね。(汗)少し調子が…(゚-゚;)オロオロ(;゚-゚)」
「おぉ、明子の友か。お初にお目にかかりる」
「お初に?2度も会うてるではござりませぬか。」
「はて?いつ?どのようにお会いした?」
「思い出さなくて結構にござりまする。まぁ!相変わらず無礼な光らない君!(  ̄っ ̄)ムゥ」
【第7回】
「はぁ~、これが光源氏と紫の上の出会いなのですね。」
「もう!雀が飛んでいってしもうたではないですかぁ!」
「もう、だいなし!(怒)」
「間違いございませぬ、その方こそ、明子様の光る君!こうしてはおれませぬ、お参りに行きましょう。」
「もし、そこをおあけ頂きたいのですが」
「あの時の、雀男!あなたのおかげで私は光源氏に逢いそこねたのです!」
「明子様の気の進まない訳がようわかりました。あんな光らない君、幾ら平氏の御曹司でも、誰が妻などになりたいものですか!まぁ、女子にそんな恐ろしげな話をしたのですか?!一体どこまで無作法なのでしょう。」
「なかなか物語のようには上手く行かないものなのですね。」