感じる存在感
松山ケンイチ/チョンジフン(Rain(ピ))2人の若き才能ある俳優/歌手を応援しています

鑑賞記録
1回目 2014.6.14(土)
2回目 2014.6;18(水)
3回目 2014.6.25(水)
4回目 2014.7.15(火) 

パンフ



初めて見た時、最初から終わりまで、なんだかただ、ただ、素晴らしい映像と、過酷な撮影をした監督はじめ、スタッフやキャストに感動しちゃいました。もちろん、物語も原作を読んで感動しているだけに、内容は若干変わってはいるものの、重要な部分はちゃんと映画の中に盛り込まれているので(それをムリクリだと言う人もいるようですが)自分的には、特に違和感も感じませんでした。

ケンちゃんが出演しているから褒めているとかではなく、木村監督のこの作品に対しての思いに、本当に言葉に出来ない感情が映像を通して伝わってきて何度も涙を堪えていました。

何かと物議がある?ラストシーン。原作では亨と美由紀(映画では愛ちゃん)それぞれの気持ちは読み手には伝わってくるけれど、本人同士はあまりはっきりとした表現はしていなかったので、今回の映画でこのように素敵なプロポーズを見せてくれた監督のサプライズに、何度観ても恥ずかしいよりも1度目よりも2度目の方がより感動してウルウルしてきちゃったんです。(変ですかね、私?)

関係ないんですけど、この作品の公開前に、「チョコレートドーナツ」と言う作品を観たんです。巷では「涙が止まらない」とか言われて話題になっておりますが、確かに感動するし、見た後時間が経てば経つほどジワジワと感情が湧き上がるという感じの作品でしたし、私自身も切なくなりましたし、いい作品でしたが、巷で取り上げられるほどティッシュケースを抱えるほど泣ける作品では私の中ではなかったです。(でも音楽とかも素敵で思わずOSTをDLしちゃいましたけどね)

それなのに、それなのに、この「春を背負って」は始まって、あのOPの桜の映像、そして小さき頃の亨と父の勇夫が菫小屋に向かう道中のシーンだけで、もう何だかわからないけれど込上げてくる感情を抑えるのに必死でした。物語はいたってシンプルな作品ですが、それ以上に色んな見所が満載なので、1度だけではとても収まらない作品だと思いました。1回目は物語り全体を見る。2回目以降は景色を中心に見るとか、俳優人達の表情をそれぞれじっくり楽しむとか、細かい部分をじっくり見るなど…

足が不自由な自分自身は、登山とか出来ないので、映画の景色をこの目で実際見る事は不可能だけど、こんな厳しくも美しいものが日本にはまだまだあって、それを守る為に尽力している人達がいて、地上で疲れた人達が心休まる場所に行けるということの幸せを擬似的だけど、自分も映画を見ながら菫小屋の常連のように感じる事が出来る幸せのお裾分けをいただけたようで嬉しかったです。

ここ数年、山ガールとか中高年の登山、そして中国人や韓国人などの観光客の人達が日本の山に登山に来るそうですが、そうい人たちにも、この作品を観ていただいて、登山の楽しさ、そして厳しさなどを理解して、改めて登山を安全に楽しんでいただきたいなと思ったりもしました。

沢山の人達が映画館という「菫小屋」に登頂していただけると嬉しいです。木村監督の笑顔をいっぱい見たいです。


(以下、ネタバレなのでまだ映画を観ていない方で知りたくない方は、ここで下山してください。あと、書かれていることはあくまでも私個人が感じたことなので、一つの考察として作品のご参考にしていただけると嬉しいです。まだ頭の中で整理が付かない上体で書いておりますので、話が飛んだり抜けていたりする部分も多々あると思いますが、思い出せばまた加筆していきたいと思っています。
そして、あくまでも監督の意図とは違うかも知れない事を予めご理解のうえ登頂してください。)



雪の山をひたすら歩く父と子。そうなんですよね。もしこれがCGとかだったら雪山を登っているシーンでもきっと「カット!」と言う声と共に現実世界に戻るんだろうけど、本当の山を登ってのワンシーン。たった数十秒や数秒のシーン、しかしよくよく考えてみれば、例えテープは回ってなくても、そこにはとどまってはいられないんですよね。結局、自力で登るか降りるかしなくちゃいけないんですよね。

これは作品全編通して、どの人に対してもそうだけど、雪も本当の雪なんですものね(雨の一部は降らせていたりもしますが)。その自然の景色の圧倒的な力に心震わさずにはいられませんでした。

父と幼き日に登った菫小屋。雪を掻き分け窓から入った室内に、思わず亨の口から出た言葉は「寒い…怖い」。なんか分かるような気がします。きっと亨にとって父の存在は、優しい部分もあるけれど、それ以上にこの時発した言葉のように「寒い…怖い」厳しく険しい山の様な存在だったのかも知れません。亨が殴られた後に勇夫が塩飴を食べさせるシーンが印象的でした。

そして結局、亨は、父とは違う生き方を選択し、都会でお金を動かす金融トレーダーと言う仕事をしてるけれど、日々見えない数字だけを追う日々に疲れている亨。一見、自分の知力と経験則で凄いお金を動かす事って若い人から見ると憧れる仕事かもしれない。でもそんな所で働いている亨は常に疲れている感じで、窓の外を眺める瞳も、そして外の景色も何だか雲っているように見えました。上司からは期待されてはいるものの、それが今の亨にとってやりがいが感じられる事なのかどうなのか表情は必ずしも活き活きとはしていない。

そんな時、突然、父が亡くなったと。
戸惑いながらも実家に向かう亨。気持ちとは裏腹に、なかなか実家にたどり着けない焦りが、今の亨の心情とオーバーラップしているように感じました。一方の長嶺家の祭壇の周りには父・勇夫を慕う人達がいて、それはそれまで亨の知らない父を知るきっかけにもなるのですが。ここで愛が登場しました。

お通夜に来た人達のもっぱらの話題は、亨がいつ戻って来るのか?そしてこれから菫小屋はどうなるのかということ。母・菫は民宿の仕事もあるからとても山小屋との両立は出来ない。亨も東京の仕事がある。しかし勇夫の残した菫小屋を手放すのは寂しいと…

亨の幼馴染の聡史も、未熟者ながらも地元に残り、自分の父と同じ家具職人を目指している。そんな聡史を見て亨も何かを感じながら、久し振りに菫小屋に行く事に。高層ビルの山には登っている亨も菫小屋には自分の足で行かねばならず、1人しんどそうであるが無事に到着。母・菫が父・勇夫が結婚する前にくれた石を持参し、それを墓標の代わりに岩場に置き、そして遺骨を散骨する。そんな時も愛はいつも笑顔で「勇夫さん、気持ちよさそう」だと。

この時、一緒に登ってきた山岳ガイドさんが帰る時、スキーでスイスイと気持ちよくスベって降りていくシーン、最初登っているとき何かついでいるんだろうあの長い棒と思っていたんだけど、スキー板だったんですね。雪山だとそんな風に降りる事も可能なのかって、なんだか妙に感心したのでした(スキーなんて当然出来ないんだけど)

父が死んでから終始、鬱々としていた亨に菫が小屋を他の人に頼むつもりだと。菫の言葉に戸惑う愛、民宿と山小屋の掛け持ちは難しい…すると覚悟を決めたように亨が、自分がこの小屋を引き継ぐと。突然の息子の言葉に嬉しくも「あなたに務まるわけがない。そんな甘いものじゃない」と菫は言うけれど、亨も「そんな事分かってる。自分で決めたんだ」と一歩も譲らない。そんな母子のやり取りに思わず笑い出す愛。この時の蒼井優ちゃんのケラケラと笑う表情が凄くチャーミングで思わずこちらもニコニコしちゃうんだけど、笑いながらも涙が…。2人を羨ましがる時の表情に今度はウルウルしてきちゃってね…ほんの一瞬の変化が凄い。観てる私も忙しい…(汗)

きっと、亨はずっと思っていだんろうね。あの父と登った時の事を。苦しくて、怖くて、寒くて…でもそこには、達成感があった。なのに売り言葉に買い言葉的に、父の仕事を道楽だと言ってしまった自分。素直になれず、田舎を離れ、都会で何十億とかのお金をただパソコンであっちだこっちだと動かしている自分。本当にそれは自分が望んでしている事なのか。きっと、亨はずっと自問自答していたのかもしれない。そんな時に、父からの最後のメッセージ。そして死。

トレーダーの仕事は、きっと自分がいなくても、困る人はいないかもしれないけれど、菫小屋がなくなるということは、父や母の思い出がなくなるだけではなく、父を慕ってきていたこの立山に来る人、そして菫小屋を好きでいてくれる人達にとってはとても困る事。代わりの効かないほど大切な事なんじゃないかと。簡単に決心をしたんじゃないと思うんですよね。あと聡史の存在もとても大きかったんじゃないかと思います。

しかし、初ボッカ、亨ちゃん張り切るけれど、現実はそんなに甘くない。だってついこの間でも、あんだけヒーヒーいいながら菫小屋に行ったんだよ?何十キロの食材やらを担いで、いくら若いからと言っても、ホイホイと運べないでしょうよ。仕方ないので周囲のお言葉に甘えて、半分以上残しての初ボッカ作業スタート。

この時の亨ちゃん、それまで都会生活していたから、お肌がまっ白けっけのシティボーイ(死語?)です。(笑)とても山男には程遠い風貌です。体力はあるかも知れないけれど、当然ながら徐々に疲労が蓄積されてくる。もうヒーヒーです。そんな息も絶え絶えな亨にいきなり声を掛けてくる男性。聞き覚えのある言葉を言ったかと思ったら、鼻歌なんか歌いながら、スイスイと歩いていく。そしてふと見ると、担いでいる荷物は自分がおいてきた物。この時のオロオロした感じのケンちゃん、安定の秀逸な演技ですな。

何度か男性に促されて、休憩をしながら、何とか無事菫小屋に到着。布団を干している愛ちゃんは聞き覚えのある歌声と顔に嬉しさのあまり屋根からダイブ!彼の名は多田梧郎。勇夫の大学の後輩で、夏の間は菫小屋を手伝っているとの事。戸惑いながらも亨にとっては何だか奇妙な3人での山小屋生活が始まりました。

ゴロさん役の豊川さんは今回、大阪訛りの標準語をしゃべったりしています。他の人にとっては違和感あるかも知れないけれど、大阪人の自分にとってはとても笑えるというか…べたやなぁ~って感じ(笑)何でやろうと思って探したら、パンフに豊川さんご自身(大阪出身ですからね)が監督にああいう風にしゃべりたいと相談したそうです。きっと、そのほうが豊川さん自身がより自然に振舞えるからだったんじゃないかなと思いました(ベタベタな大阪弁・関西弁ではなくて大阪訛りというのが)

大阪訛りっていうのは、例えばここに書いているような文章などや標準語を本人は普通にしゃべっているつもりなんだけど、他の地域の人から聞くと何か違う?のが大阪訛り。ケンちゃんも普段は下北弁訛りの標準語(多分完全に下北弁にすると何話しているかわからないと思う)ですよねああいう感じ。私も昔、関東の人の家に電話した時に、自分では完璧な標準語だと思っていたのに、向こうの人に思い切り「関西訛りの人から電話だよ」と言われた経験が有りますわ(笑)こういう何気ない部分も演技をしてないと言う中の一つなんだと思いました。(より自分が楽に役に入れる)その時々に自分が伝えやすい言い方で語るゴロさん(^_^)。

亨の山小屋生活を、季節の移り変わりの立山に咲く高山植物や、峰々の風景で時間の経過が表現されていて、それがまた、なんともゆったり、そして観てる私もついつい気が付けば、微笑んでいるんですよ、隣に人がいたら不気味かも知れないけど。

しかし、山小屋の主としての生活は本当に大変です。定期的に山小屋で必要な物を麓に降りて再び担いで、菫小屋まで運ばないといけない。ヘリコプターでビューンと運ぶ方法もあるけれど、当然の事ながらお金がかかります。小さい菫小屋にはそんな予算も当然ないし、ヘリは必要最低限、いざと言う時にしか使えません。

山小屋では、やって来る登山者の皆さんに飲み物や食べ物の提供、そしてこれから次の場所に向かうための気象情報や周辺についての様々な情報交換やアドバイスもしなくてはいけないので知識も必要ですよね。宿泊される方の予約、お世話などもあります。慣れない亨にはグッタリな毎日。そんな亨を、愛とゴロさんがしっかりフォロー。シティボーイだった亨の白かったお肌も、山小屋の生活の慣れと共に、少しずつ逞しい山男に近づいて黒くなってきていますよ。

ある時、ゴロさんは亨をある場所に連れて行く。そこは亡き父勇夫とゴロさんが見つけた秘密の場所。そこからの景色を見て改めて感動する亨。そしてそこを整備して菫小屋の常連の皆様に楽しんでもらえるような「秘密のテラス」にしようと。そして常連の女性登山者高野(市毛良枝)と出会うが、ゴロさんは高野が色々聞いてくるんだけど秘密にしたいからなのか、話しを適当にごまかしております(笑)少しずつ、菫小屋も勇夫の代から亨の代へと変わってきていることを感じ取る高野さん。しかし、ゴロさんがごまかしてるにもかかわらず、亨がポロッと言っちゃいました。この一連のシーンの中に木村監督がエキストラ出演。本当に飛び切りの笑顔で、亨と若い人達の会話を「ウンウン」と聞いておられましたね(^_^)

でも、山小屋での生活はそんな楽しい事ばかりでもなく、ある時は1人でやって来た女性(KIKI)が動けずにいると言う連絡があれば、救助隊が来るまでに、雨の中を登山者の身柄の確保&救助に向かったりすることもある。

さりげなく、市毛良枝さんやモデルのKIKIさんなど、山好きで有名な女性陣が登場したりする事も興味深いですよね。
山の情報をいくらガイドブックを熟読して理解したつもりでも、自然というのはそんな思うようには行かない。何度も登っていると言う過信が出る時期が一番危険だと。ゴロさんの言葉に、亨自身もまだ、そこまで山の恐ろしさを感じることがなかった。

愛ちゃんが気持ちよさそうに外でシャンプーしています。若干ドギマギな亨。程よいプルプル感の二の腕が良いなと(笑)大阪弁の若者が愛ちゃんとゴロさんいないかと尋ねられたみたい。勇夫さんの供養に常連の登山客が丸石の所で笛を演奏してくれています。おっ、仁科さんじゃないですか。あと、どうやらもう1人はモンベルの社長さんだそうです。結構、今回の作品にも「劔岳」のキャストが出演しておりますからね。

若者は菫小屋の常連の須永、別名:おおめし君といわれている若者がやってきました。
兎に角、沢山食べるのでゴロさんがネーミングしたそうです。山の天気は変化が早い、笛を吹いていた人達も天気が悪くなってきたということで早々に山を降りる事にしました。おおめし君は就職活動中でなんと、以前まで亨が務めていた会社の面接を受けて3次面接まで進んで最終面接が近いと。願掛けに立山を縦走して石を置いてくると言うのだが、天候が不安定だからという亨に「自分の方が登山に関しては先輩だ」というようなことを言われ、それ以上強く言う事が出来ない亨。

一応、愛と亨の話しを聞く振りし、2階で様子を見ると言っていたおおめし君だけど、愛と亨がそれぞれの仕事をしてる間にこっそり山小屋を抜け出してしまいました。暫くすると、電話がかかってきて、相手が小屋にいるはずのおおめし君!2人の油断している好きに抜け出した事を知るけれど、どうやら天候不良で連絡してきたみたいです。それからすぐ救援隊から連絡が入り、男性1人が滑落しているらしいと。先ほどの電話の事もあっておおめし君だと。

救助隊が到着するには時間がかかるため、ひとまず場所と遭難者の確認&確保のため、愛と亨は現場に向かう事に。
テキパキと準備をする愛ちゃんが頼もしいですね。救助隊とゴロさんも現場に向かいます。愛ちゃんと亨は無事、おおめし君を発見!救助隊が来るまで亨がおおめし君の所まで降りていくけれど、おおめし君は転落して足を負傷してしまって動けない。ひとまず周囲にある物を使っての応急手当をして待っているとゴロさんと救助隊が到着。何とか無事助ける事が出来ましたが、山小屋に戻ってからの亨は自己嫌悪。

重苦しい空気の中でゴロさん「亨くんは良くやったと思うよ」と言うけれど、きっと、ゴロさんがいたら、おおめし君にもっとちゃんと意見できただろうし、同じ事を言ったとしてもゴロさんが言うなら聞いていたかも知れない。何もかも、まだ未熟な自分だったから、おおめし君に「自分の方が経験がある」といわれると、それ以上、強く言えなかった自分に対して、経験が未熟では済まされない山小屋での生活の現実の厳しさを思い知らされる。 そんな亨に「これから同じ失敗を繰り返さなければ良いんだ」とゴロさんが優しく言ってくれる。

翌日、聡史の工房に向かう亨。夢中で椅子を作っている聡史を眺めている亨だけど、思い切って声を掛ける。まだまだ未熟者の自分に、勇夫さんが椅子を注文してくれたんだと。すでに主を失くした椅子だけど、今聡史が出来る精一杯をかけて椅子を作る。そんな聡史を通してまた亨も気持ちをリセット。

聡史に触発されたのか、亨もゴロさんんと愛ちゃんに山小屋の一部に個室を作ろうかと提案。ゴロさんは元建築の仕事をしていたので作業はお手の物ってか(^_^)そしてカメラマンクルーが避難してきた時には天気の事などを話す様子に確実に山小屋の主としての成長に2人も心強く思ったり…

そして、それまで自分のことを話さなかった愛が2人にポツリポツリとなぜ自分がここにいるのかを話し出す。
愛の父親は認知症を患い、愛は働きながら母と父の介護をしていたが、その父が亡くなり、暫くして今度は母もがんで闘病を余儀なくされてしまった。介護疲れ、母が死ぬときも、その男性と温泉旅行に行っていた。しかも男性が実は結婚している人だったことを知り、、自分自身許せず、そして遺品の中に唯一見つけた父と母の思い出の写真。それは立山の風景の写真だった。愛自身も父と母が見た景色を一目、見たいとやった来たものの、怪我をして動けなくなってしまう。自分はここで死んでしまうんだろうかと思っていた所に、勇夫がやってきて自分をおぶって菫小屋まで連れて行ってくれた。その背中で亡き父を思い出したんだと。

静かに聴いている2人。大切な人を一度に亡くし、罪悪感と孤独になった絶望の中で息苦しくもがき苦しんでいた愛に、心温めてくれる自分の居場所と言う酸素を勇夫が吹き込んでくれたんだと。菫小屋という酸素のおかげで今、自分はこうして生きる希望をもっていられるんだと。そういう愛の言葉を聞いて亨は亡き父から、そして愛から改めて自分の居場所は菫小屋なんだと言うことを確信すると共に、ゴロさんや愛から常に沢山の酸素を貰っているんだと実感する。

この長回しと6台のカメラの同時撮影、きっと編集するの大変だったのではと思います。3人、それぞれの表情をどう切り取ろうかと。緊迫した空気になるはずが、愛の話を受け止める2人が本当に静かに、そして心の中では愛の抱えていた苦しみを受け詰めてあげようとする思いがとても温かく包んでくれているというか…。話し終わった後の愛のホッとした表情。ゴロさんの必要以上に話かけることもなく、その場をお開きにする心配り、亨の愛に対する自分の思いそれぞれが
本当に自然にまたいつもと変わらないようになって、見ていることらもホッとするシーンでした。

そして、これから自分の菫小屋にすべく計画を立て、小屋閉めの日。
聡史が出来上がった椅子を担いでやってきた。勇夫は座る事が出来なかったけれど、新しい山小屋の主人である亨に座って欲しいと。今思えばそれはまるで、勇夫から亨への贈り物のようですよね。未熟な2人が頑張って完成させた大切な物。

しかし、突然愛のただならぬ様子に2階に行くとゴロさんが倒れている。意識はあるけれど体が思うように動かない。これは一大事、すぐ救助隊に連絡するけれど、ひょっとすると命に関わるかも知れない、しかし救助隊が到着するには時間がかかりすぎてゴロさんの容態に関わってくる、亨は自分が担いで何とか救助隊を落ち合える場所まで連れて行くと。

しかし、ゴロさんは自分の為に無理しないで欲しい。ここでもし死ぬのならそれはそれで自分は満足だからと。そんな言葉亨には絶えられない。勇夫が死んで、これまで、山小屋での生活に関して本当に優しく丁寧に教えてくれた人を見捨てるなんて事は出来ない。そして亨がゴロさんを背負って山を降りていくシーン。深雪のためか雪が深く、足を取られなかなかませに薦めない。崖を降りるときもゴロさんに当たらないように愛と聡史もサポートする。途中、聡史も交代してゴロさんを背負って歩く。この一連のシーンも本当に手に汗握りました。

背負っているケンちゃんも大変だろうけど、豊川さんは怪我人とかではなく、半身麻痺していると言う状況なので、背負っているケンちゃんや新井さんが雪に足を取られても下手に力を入れて踏ん張ったりすることは出来ないし、本当に地味だけど実はとても大変そうだなと何度観ても思いました。その上、監督にスタート前にいきなり背負って歩くんじゃなくて、背負って歩いている間に撮影してくださいってケンちゃんが監督に要望していたそうです。汗も、苦しい表情も全てに自分を追い込んであのシーンを撮影したんですよね。

何とか無事、救助隊と落ち合いゴロさんを病院に連れて行く事が出来ました。発見と初動の手当てが良かったおかげかゴロさんは大事に至らなかったようです。

そして季節は巡り、また山開きの日がやってきました。ゴロさんの事が心配な亨だけど、他の皆は楽天的(笑)そしてゴロさんがまだ不自由ではあるけれど、杖をついて菫小屋に帰ってきました。ようやく菫小屋の家族がそろいました。

そして立山の風景を皆で見ていると、ゴロさんが聡史にエベレストを渡る鶴の話をする。これって、勇夫が初めて亨と菫小屋に行った時に話をしてくれた事と同じ…その場には若き日の勇夫とゴロさんが一緒にその場にいてみた景色だったのではないかと。

「まるで私たち本物の家族みたいね」そんな空気の中で、突然亨が愛を読んでいます。戸惑いながら亨に導かれる愛ちゃん。2人で何かを話しています。それを菫・ゴロさん・聡史が温かいまなざしで見守っています。この時の若い2人を見守る3人の温かい眼差し、本当の家族ができる確信と喜び、私は亨は愛のあの話を聞いたときから決めていたんじゃないかと。そしてきっとあれは亨が愛にプロポーズをしているんじゃないかと。

その答えがあのクルクル回るにつながるんだろうなって。気持ちいいだろうな~。これからもきっといろんなことがあるだろうけど、ゴロさん、愛ちゃん、そして亨と言う家族が父と母のように菫小屋に来る人達に沢山の酸素を与え、与えられる場所にしていくんだろうなと言う希望が感じられて、エンドロールの縦書き(ザ・木村作品と言うエンドロール)&山崎まさよしさんの曲にまたもウルウルさせられるのであります。(特に山に移る雲の陰の動きとか、最後のほうの朝日が登っていく映像とか素晴らしい)

ゴロさんがあんな状態なのになぜ、ヘリを呼ばないんだと言うことを言う方も多いようですが、そんな簡単な事でもないようですね。調べたら、ヘリに救助を頼んだからと言って、まずどんなヘリが来るのかわからないそうです。ドクターヘリが来ると言う確約はない、その時飛んでないヘリがやって来るそうなので、救助ヘリじゃないものが来ても結局着陸できなかったり、安全に患者を吊り上げ運べるかどうかもわからないそうです。その後の、木材をヘリが運んできていますがあれはあくまでも運んできた物を下ろすだけなので病気や怪我人を運ぶのとはまた状況も違いますし、あんな木材担いで運べませんからね。仕方なくヘリを使わないといけなかったんだと思います。(パンフレットに山小屋での生活に関して運営などに関する詳しい事も紹介されています)そんなリスクを待つよりも、自力で(脳梗塞なので厄介だと思いますが映画的にも)救助隊と落ち合うほうを選択したのではないかと思いたいです。大切な人だから余計に。

すべてがリアルでもないだろうし、すべてが虚構でもない。そんな事を考えながら観る作品ではないと思うし、大きな自然に身をゆだね、父の背中を見ながら山を登っていた息子が山小屋の主になる姿を一緒に見守るそんな作品だと私は思います。

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