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感じる存在感
松山ケンイチ/チョンジフン(Rain(ピ))2人の若き才能ある俳優/歌手を応援しています
2014.6.28記述
東洋経済より

日本映画界を代表する名カメラマン・木村大作にとって『劔岳 点の記』(2009年)以来、5年ぶりとなる監督作『春を背負って』が公開されている。

 笹本稜平の同名小説を原作に、松山ケンイチ、蒼井優、豊川悦司、檀ふみ、小林薫、新井浩文、吉田栄作、安藤サクラ、仲村トオル、石橋蓮司ら実力派のキャストが集結した本作。父から子へと受け継がれる思い、仲間を思う人間たちにスポットを当て、山に生きる人々の物語が描かれる。今回は原作の舞台・奥秩父を、立山連峰の3000メートルを超える大汝山に建つ山小屋へと変更。その山頂から見える360度の大自然を背景に、美しい四季の移ろいが描かれている。そこには、「人は皆、何かを背負って生きていくしかない」という木村監督の人生哲学が映し出されている。

 前回に続き、今回も、木村大作監督に、映画に対する思い、情熱、こだわりなどについて聞いた。

前回:「木村大作監督が語る撮影に対する“覚悟”」はこちら


原文はこちら


もう一度監督をやろうと思った理由

――木村監督が『劒岳 点の記』で監督をやろうと思ったのは、周りに年下の監督が多くなって、カメラマンとして呼ばれることも少なくなるだろうからだ、というようなことを以前、おっしゃっていましたが、そのときは「ただ1度の監督だ」ともおっしゃっていました。

『劒岳 点の記』が出来上がったら、もう日本映画界とはおさらばだって言っていました。実際、映画が終わった後は、俺の人となりや映画作りなんかについて話をしてくれという依頼があったので、講演で日本各地を回っていた。でも、そのうち講演の依頼もだんだん来なくなったので、しまいには「俺、どうやって食べていこう」と思うようになった。そのときに考えたのは、俺はやっぱり映画が大好きで、俺の人生は映画と共にあるけれども、でも、その前に生きていかなきゃいけないんだと。「武士は食わねど高ようじ」ばかりはやっていられない。そう思ったときに、企画から監督から、何もかも全部やって、それが通れば自分の仕事ができるんじゃないかと思ったわけ。結局、今さらほかの仕事もできないからね。しだいにもう1本やりたいなと思うようになったというわけ。

――そこで、この『春を背負って』を作ろうという話になるわけですね。

だから東京で完成報告会見が行われたときには謝りました。みんな笑っていたけどね。まあ許してくれたよ。

講演会をしていたときにも「もうこれでやらないよ」なんて言ったら、みんなから「そんなこと言わないで、やったらどうですか」と言われてね。これはいちばんの笑い話なんだけど、中小企業の社長さん相手に講演をやったときに「人生、徒労の連続だよ」とぶちまけたんだ。要するに徒労と思ったことをやらないと、その先は何もないぞということを言いたかった。「能率、効率と考えて、ヒュッと行くなんてことは、ありえない。徒労というか、無駄な骨折りと思っても、そこへ突っ込んでいく勇気を持て。そうすれば何か出てくる可能性がある!」とか言ってね。けっこうみんな感動していたよ。そうしたら、それからしばらくして、その中のひとりから手紙が来たんですよ。次回作の『徒労』を早くやってくださいってね(笑)。

どこの講演会でも、「もうやんねえよ」と言っていたんだけど、「そんなこと言わずにやってください。山の映画をやる人なんて木村監督しかいないから」とか言われる。そうすると「あれだけ言われるんだから。ま、いいか」という気持ちにもなるわけでね。自家用車を使って47都道府県を宣伝に回るのも、これをなんとかヒットさせようという気持ちがあるから。それはやっぱり映画をもう1本やりたいという気持ちの表れなんだよ。

木村監督からみた金融の世界

――この映画の主人公はもともと、金融業界におり、そこから山の生活へと転向するわけですが、木村監督は金融の世界をどう見ているのですか?

そこは全部調べた。信託銀行のトレーダー室を見に行ったりもした。ただ、見せてはもらえるけど、「ここを撮影に使わせてくれないか」と言ったら、みんな駄目だって言うんだよね(笑)。そこで働いているのは20代から30代くらいが多かった。「なんでこんなにみんな若いんだ」と聞いたら、一瞬の勘が必要だからというんだな。それとパソコン。年をとったら追いつかないってわけよ。

(主人公の)松山ケンイチさんは28歳だったからね。ピッタリだよな。松山さんは青森出身で、インテリに見えるわけだよ。要するに立っている姿が凛としているんだな。そういう意味ではピッタリ。ただ、原作では科学者なんだよね。でも、俺は科学のことはまったくわからない。そこで脚本を書いている瀧本智行が「トレーダーはどうですか」と提案してくれて、それはいいなと思ったわけ。やはり時代の最先端の仕事だからね。

――そこから180度違う世界に飛び込むことになると。一方、木村監督自身は悟郎さん(豊川悦司)になりたいと思っているとのことですが。

俺はほとんど映画界の放浪者だからね。映画界で非常識なところを歩く、完全なる異物だよ。だから劇中で悟郎さんが言っているせりふは原作にはない、ほとんど俺が書いたセリフ。象の話もそうだね。10年前にアフリカのサバンナを放浪したら、1頭の巨象に出会ったと。象は年老いたら、群れに迷惑をかけないために、群れから離れる。俺がいつも言っているのは、「人生、人に迷惑をかけないのが最高の人生だ」ということなんだ。

実際は迷惑をかけっぱなしだけどね(笑)。でも、人に迷惑をかけないで生きていける人が、俺は最高の人だと思うよ。でも、だいたいそういう風には生きられない。だから自分が常日頃、思っているセリフを悟郎さんに言ってもらったんだよ。

――豊川さんの役は、原作ではホームレスでしたが、変更した理由を教えてください。

もともとは年をとった人を考えていたんだけど、豊川さんがやりたいということになったとき、「自分はホームレスですかね」って言っていたんだけれど、体はでかいし、あの顔だから「無理があるよ」って。そこでとっさに放浪者にすることにした。それでもまだ納得しないから、その、今考えたセリフだと言って、さっきの象の話をしたわけ。そうしたらもう固い握手になっちゃってね。俺はとっさの決断とか、瞬発力だけは早いんだよ。

――それこそトレーダーとして仕事ができるんじゃないですか?

よく言うんだけど、俺は理屈で生きた覚えがないんだよ。俺の人生は全部勘だよ。もしかしたらトレーダーは合っているかもしれないけど、実際、トレーダーは難しいんだよね。どの辺まで落ちたら、また上に行くのか。上がったら、今度はいつ落ちるんだといったことを読まないといけない。その判断は、ただ本を読んで勉強するだけじゃ駄目だろうね。

――経験も重要という部分では、木村監督の映画人生と重なるんじゃないですか?

うん。本当にそうだよ。

役者のそのままの姿を見せてほしい

――普段は俳優さんに何を要求しているのでしょうか?

「役になりきろうと思わないで、あんたでいてくれ」ということだね。だってそういう人を選んでいるんだから。「あんたはそういう人にピッタリだと思って選んだんだから、何の注文もない」ってことだよ。「普通にやればいいじゃない。もう松山さんはそのままでいいんだよ。28年生きてきているんだから、いろんなことがあったでしょ。そういうその雰囲気でやってくれればいいんですよ」と伝えたこともあった。

豊川さんはもう51歳だったからね。あの人だって人生いろいろあっただろうからさ、そのままでいいんだよ。俺が豊川さんでやりたいって言ったんだから。あの人は今まで暗くて、こわもての男の役が多かったじゃない。でも本当は違うんだよ。彼は関西人だから、あるとき「関西弁を入れていいですか」と言ってきたんだ。「ああ、どうぞ」と返した。だからこの映画では、今までと雰囲気が違うよね。その人が持っているものを全部出させることは、得意なんだ。蒼井優さんが言ってくれたよ。「大作さんは役者を演出していないけど、映画を演出している」ってね。いいこと言ってくれるなあと思った。彼女はものすごく頭がいい人だよ。

――木村監督のこれまでのコメントや、インタビューなどを読むと、被写体である俳優さんがものすごく大好きなのかな、という印象があるのですが。

好きな俳優はそうだね。でも嫌いな俳優はもう極端に嫌いだよ(笑)。俺のキャスティングは、芝居がうまいとか下手とかは関係ない。人としてのたたずまいがいいヤツってことだな。松山ケンイチさんは立っている姿が凛としているよ。真剣に人生を生きているということを、立っている姿だけで表現しているところがある。その最たる人は高倉健さんだけどね。結局は人間なんだよ。俳優って芝居する人なんだろうけど、あんまり芝居をされてもね。

自分が納得するためには口論もいとわない


――自分の仕事を納得がいく形にまとめるためにはケンカもいとわない木村監督のスタイルは、若いビジネスパーソンにも参考にしたいところですが。

俺はいつもケンカばかりだよ。さっきだって宣伝スタッフとケンカをしてきたばかりだしね(笑)。

――近年はケンカをすることを嫌がる人が多い傾向があります。

それは俺にはない。だって自分が思っていることと意見が違うわけだろ。それは言い合っていれば当然そうなる。それを嫌がるということは、「はいはい、わかりました」ということでしょ? そんな人生は俺にはないな。だいたいこの映画だって自分の思いどおりにやっている。唯我独尊。誰の言うことも聞いていない。

プロデューサーにだっていろいろと言いますよ。いっさい言うことは聞かない。でもカネを出しているのはあっちなんだけどね(笑)。そのへんはカメラマンの時代からずっと通っているね。俺が病気をしないのはストレスがたまらないからなんだ。全部出しちゃうね。とにかく言いたいことは言う。それでそのまま進むっていうことだよ。それを駄目だと言うのなら、この映画はやらないということ。

――それも覚悟ですね。

そう。俺は監督をやりたいわけではなく、映画を作りたいだけなんだ。それが最優先だよ。ただ、俺はすぐにカーッとなるからね。もうずいぶん前だけど、(映画監督の)降旗(康男)さんに自分の生き方を相談したことあるよ。「俺、すぐケンカになるから、自分の性格が嫌になっちゃうよ」ってね。

毎日のように怒鳴っていたら疲れるしね。降旗さんに「どうしたらいいんですかね」と尋ねたら、「大ちゃんは、いちいち立ち止まりすぎる。世の中にはこういう人もいるんだと、通り過ぎればいいんですよ」と言うんだね。それは「老子」なんだよ。「水のように生きろ」ということだね。降旗さんはそれを実跡しているわけだよ。「通り過ぎないと生きてられませんよ。大ちゃんはいちいち立ち止まるから」。そう言われて、なるほどと思ったから半年ほどそれを実践してみたけど、結局、俺にはできなかった(笑)。

我慢できないから、また立ち止まる。結局、すぐに「お前なんかやめちまえ!」という感じになっちゃう。そういう意味では、そうやっていても今まで生き残ってこられたわけだから、このまま行こうかという気持ちと、もう年も年なんだから、もうちょっと大人になろうかという気持ちと、ない交ぜになっているところはある。でも、最終的には大人になれないなぁ。そういうふうになろうと思えば思うほど、寝むれなくなっちゃうんだよ。それであるとき、「ああもう、やめた、もう今までどおり行こう」となると、スーッと寝られるんだよね。

――健康の秘訣はそういうところにあるわけですね。

ストレートにね。大きな声を上げるということね。これは大切だよ。俺は今まで、本当に入院したことがないんだから。あと5年は大丈夫だろ。80くらいまでは映画をやろうと思っていますよ。

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