感じる存在感
松山ケンイチ/チョンジフン(Rain(ピ))2人の若き才能ある俳優/歌手を応援しています
2016.11.29記述
OLIVERより

oliver001.jpg


今年は『の・ようなもの のようなもの』『珍遊記-太郎とゆかいな仲間たち-』『怒り』などバラエティに富んだ映画に出演している松山ケンイチ。最新出演作『聖の青春』では若干29歳の若さで亡くなった実在のプロ棋士・村山聖役に挑んでいる。ストイックで妥協を許さない役作りで知られる松山に、今作はどのような影響をもたらしたのだろうか。プロ棋士の世界と自身の役者人生と重なる部分や今後の展望など、松山ケンイチの仕事哲学に迫った。


原文はこちら

研ぎ澄まされた人は美しい。それを表現したかった


ネフローゼという難病と戦いながら将棋に全てを懸けた村山聖の壮絶な生き様を、松山は徹底した役作りで臨んだ。“村山を演じるならば、まず体型を変えなければスタート地点に立てない”そんな覚悟があったという。

「まず体型を村山さんに近づけないとこの役は演じることができないと思いましたし、プロ棋士としての佇まいを身につけることも必要でした。役作りで準備しなければいけないことが沢山あって、そのどれもが簡単にできるものではなかった。それでも絶対に演じたいという思いが強かったのと、演じることで他の仕事に制限がかかってしまうことを許してくれた周りのスタッフさん達がいたおかげで出演することができました」 .

007_20161129215819670.jpg


.
役作りの準備期間はなんと1年半以上かかっており、今までの準備期間の中で最も長いものだったという。それほどまでに入れ込んだ村山聖という人物に対し松山は「人間のルールやしがらみに捕われない生き方をされていたのが魅力だった」と語った。

「僕が29歳の時に原作に出会って、読んでみると偶然にも29歳で村山さんが亡くなったことを知りました。病に人生を左右されず、更には病を相棒のように受け入れながら自分の人生を好きなように生きた人がいたことが衝撃でした。僕自身も自由気ままに生きれたらとどこかで思ってる部分があります。村山さんのような生き方を知ってるのと知らないのとでは、今後の人生が全然違ってくると思うんですよね。ルールに縛られて苦しんでる人にとって良い発見になるというか…僕自身も良い影響を受けたので、それをそのまま作品に落とし込んでお客さんに伝えたいと思ったんです」

心のままに人生を歩みつつも、ルールの決まっている将棋の世界で生きてきた村山聖。当然ながら劇中では村山の数々の対局を描く必要がある。将棋の対局番組を見てもわかる通り、動きの無い真剣勝負を画で表現することは難しかったのではないだろうか。

oliver002.jpg


「プロ棋士の対局を実際に拝見した時に感じた雰囲気や空気感というのは、普段吸っている空気とは全然違って、まるで粒子のひとつひとつが重さを持っているように感じました。なのでどちらかというと勝負の画というより、緊迫感を感じた息苦しさを演技で表現しなければいけなかった。

勝負の世界に生きている人達は“いろいろな荷物を背負って”対局の場に座っているわけじゃなくて、“余計なものを捨てて” 相手に勝ちたいという純粋な気持ちだけで来ていると感じたんです。そんな風にどんどん研ぎすまされていった美しさを表現したくて、特に村山さんと羽生善治さんとの対局シーンでは美しいもの同士の対峙という画になったらという気持ちで挑みましたね」

芝居であることを忘れるほど“深く潜った”


100人に一人の天才と言われる羽生と村山との最後の対局シーンは、約3時間の長回しで撮影したという。70手以上におよぶ実際の対局の棋譜を覚えて再現し、その映像から数分間のみが使われたそう。これは長年役者人生を歩んできた松山にとっても初めての出来事だった。

「3時間の長回しは初めての体験でした。もちろん最初はお芝居をしている感覚はあるんですけど、途中で演技を捨てる作業をしている自分がいて。それは今まで感じたことのないような面白い体験でした。僕は凄く臆病で恐がりなので、クランクイン前に演じる人物のリサーチを徹底して行います。でも、そこに頼り過ぎてしまうと実在する人物のコピーでしかなくなってしまうので、演じる前にリサーチした情報を捨てたり忘れていく作業が必要になってくるんです。今回も捨てていく作業をしてから演じたのですが、演じている途中で芝居をしている感覚自体を捨てていったのは今作が初めてで新鮮でした」

演じる人物をリサーチして知ることで不安を無くすという松山。村山聖の人生を生きる中で見つけたプロ棋士と自身との共通点とは。 .

「村山さんは体を休ませないといけない状態にもかかわらず深酒をしたり、朝まで麻雀をしたりと体を痛めつけています。これは“死”に近づくことですが、村山さんにとっての“生”は肉体的なものだけでなく、“将棋を続けること”が生きることだったのかなって。将棋を芝居に置き換えると僕にも若干そういうところがあって。というのも、先日羽生さんにお会いしたのですが、将棋の世界に深く潜り過ぎて普段の自分に戻れなくなる怖さを感じることがあるとおっしゃったんです」 .

「僕も20代前半は仕事が続いていて自分がいまどこにいるのかわからなくなる時期がありました。お酒を飲み過ぎたりケンカしたりして自分を痛めつけることで普段の自分らしさを取り戻すことも。あまりに役に没頭しすぎて怖くなるのは、羽生さんが将棋人生に感じた怖さと似てるのかなと思ったんですよね」

俳優・松山ケンイチは、今作で村山聖という人物を演じるというより、心の在り方を含めて“村山聖の人生”を濃縮して演じたのではないか。 .

役者として生きる、その意味を考えるようになった

oliver003.jpg


これまで出演してきた『デスノート』や『デトロイト・メタル・シティ』『GANTZ』『ノルウェイの森』などの作品の彼の演技を振り返ると、それぞれの役になりきった“憑依型”俳優という印象を受ける。演技力だけでは補えないある種の覚悟と徹底した役作りで挑んだ芝居だからこそ、本来の自分を取り戻すことに苦しむ時期もあったのだとか。

「先輩の役者さんでも役に没頭しすぎて2年間何をやっていたかわからない時期があったという方もいました。ただ、僕は幸せなことに26歳で結婚したので、家に帰れば家族の存在により本来の自分を取り戻せるようになった。家庭を持ってからはそういう“自分を取り戻せなくなると感じる怖さ”はなくなってきたと思います。仕事は大事ですけど、生き甲斐にしてしまうのは嫌で。あくまでも仕事というのは生活のためにやるものであって、プライベートでの自分の人生も大事にしたい。家族を持ってからこんな風に考え方が変わりました」
仕事は生活をしていくためにあるものという松山にとって、オフの一番の楽しみは子供と遊ぶ時間だと言う。

oliver004.jpg


「自分も楽しみながら子どもと遊びたいですね。例えば水族館に子どもと一緒に行っても僕がただ座って携帯を触っていたら意味がないしもったいない。自分も子どもたちと一緒に新しい発見がしたいんです。自分がまだ行ったことのない場所に遊びに行くのが好き。そうやって子どもと過ごしている瞬間にも常にアンテナは張り巡らしていて、“なにか面白いものないかな”と探しちゃうんですよね。好奇心や探究心が強いんです。自分が知らなかったこと、気になることがあると何でも調べますから」

“自分が知らなかった人物や生き方を作品として発表することで、観客に驚きを与えられたらこれ以上嬉しいことはない”と話す松山。役者として生きる意味をそんな風にして自身の中に見出しているのではないだろうか。

oliver005.jpg


「自分の芝居や作品を通して新たな発見や驚きをお客さんに与えられたら嬉しいし、それが仕事へのモチベーションになっているところはあります。僕は今後、日本人の多様性を描いた作品に出てみたいと思っていて。というのも、僕は青森出身でいまだに地元の方言を大事にしています。でも標準語が話せないことで見下されてるように感じることがあるんですよね。

そんなことってほかにもありますよね。地方出身者だけじゃなく例えば、同性愛者の方に対してだったり…。同じ人間同士なんだからもう少しフラットな関係でいられように僕にも何かできるんじゃないかと。映画やドラマでそういったテーマを扱って、偏見を持つ人が少しでもいなくなったらいいなと考えるようになったんです。そんな、テーマのある作品に今後出演できたらいいなと思っています」

OLIVER読者へメッセージ「遊びも仕事にも、生きていることを感じたい」


oliver006.jpg


真剣な眼差しで今後の展望を明かしてくれた。松山ケンイチ流の、人生の楽しみ方とは。最後にこんな言葉で締めくくった。 .

「限りある命なので一瞬一瞬がただ過ぎてしまったらもったいない。だからといって日々エンジン全開で生きるのではなくて、仕事は全力でやって、休む時はしっかり休み、遊ぶ時はしっかり遊ぶ。何をするにも“生きている”ことを感じながら人生を歩んでいきたい」

ごく当たり前のことシンプルな言葉で紡ぎだす松山。斬新な考えや取り組み、派手さを求めるのではなく、しっかり地に足を付けて、毎日の生活そのものを丁寧に生きていく。役者として数々の役柄の人生を追体験してきたからこそ言える、松山流の人生の楽しみ方だ。

oliver007.jpg


「そして僕にとって一番大事なのは家族なので、妻や子どもときちんと向き合うことに関しては死ぬまで続けていきたいです。子どもに正しいこと正しくないことを言葉で教えるよりも、一緒にいることのほうが大事だと思っているので、そこはできる限り自分の人生をかけてやり遂げたいと思っています」


渋い写真でまとまったインタビューです。
家族、そして子供たちのことを考えながらも、自分も楽しむという精神がきっと、演技に直結する部分があるんだと思います。
単に突き詰めていくだけではなく、もっと複雑にそして丁寧に、そして広がりが出来ていると思うんです。
結婚しても子供がいてもいつまでもフレッシュな気持ちで役に向き合って、でもそれって奥様の理解やサポートもないときっと難しいことだと思うんです。

これからもそんな風にいろんな人と向き合いながら、素敵な役を生きて私たちに見せてほしいです。


スポンサーサイト
コメント
この記事へのコメント
URL :
コメント :
パスワード :
管理者にだけ表示を許可する
 
Template designed by アクセラと+αな生活(ホノミ)

Powered by .